日本GP等                                                SUZUKI

水谷は第2戦筑波では転倒、右膝を骨折してしまい、長期欠場することとなったが、第8戦菅生で復帰し、周回遅れながら3位入賞、最終戦日本GP(鈴鹿)を迎えた。プラクティスではスペンサーが2分19秒56でポール、2位が平忠彦で2分22秒40で、水谷は2分24秒95で6位。水谷に与えられたマシンは次の2台。
 ゼッケン1T。いずれも車検時のもの。フレーム番号X4540-X(最後のXは不明瞭)。これは本来は部品番号の一部である。後輪は18インチ。左端の回転計の部分を拡大したのが左で乾電池が写っている。この乾電池は一般に「SAEC作動用」とされているが、実は電気式回転計作動用のものである。右端の消音器に黄色で「X50」と書かれているが、「SAEC仕様の排気管」を意味していると思われる。スイングアームピボット部周辺の補強はない。スイングアームのプッシュロッドは1本で、スイングアームの補強部分に明確なくびれはない。  ゼッケン1のレース使用マシン。いずれも車検時のもの。第8戦以降用いられた新2007、新2006と同型である。スイングアームのプッシュロッドは逆Y字型。右はメーターパネル部を拡大したもの(マシン左側から撮影)で手前の水温計の前(写真では右側)に回転計用乾電池(直方体)が装着されている。右前気筒用消音器に書かれている黄色い文字はおそらく「X50」。これもSAECエンジンだと思われる。前後輪共16インチホイール。フェアリング両側にキャブレター新気導入ダクト(世界GPでは未確認)が設けられている。
 
 レースではスペンサーがスタートから飛び出し、独走で優勝、水谷は5位。
  レース後の再車検での重量測定の結果は次のとおり。
1位 スペンサー  NS500 122kg 





(注:平の0W70の車重については、0W70その3を参照)
2位 平忠彦 0W70 140kg
3位 河崎裕之 0W70 132kg
4位 阿部孝夫 NS500 123kg
5位 水谷勝 XR45 123kg
6位 伊藤巧 RGB500 140kg
250cc版  
全日本選手権第2戦(筑波サーキット、3月26〜27日)のプラクティスで岩崎勝がスズキ250に乗り、1分5秒41で15位のタイムだったが、レースは欠場した。エンジンはXR45のクランクケースをそのまま用い、前半分のシリンダー、クランクシャフト等を取り外し蓋をしたものといわれている。車体は写真からするとシーズン前公開マシンと同型でホイール・タイヤのみ変更したようだ。
SAEC
 SAEC(Suzuki Automatic Exhaust Control)という名称が公表されたのは、この機構を用いた市販車が1985年に発売された時ではあるが、便宜上、XR45についてもこの名称を使用する。
 これは、シリンダーの排気経路の上側に穴を開け、シリンダー及びシリンダーヘッドに設けられた副室と繋ぎ、その間を回転する排気バルブ(円筒形ロータリーバルブ)で開閉するものである。排気バルブが開いた状態で排気管-副室間を排気ガスが出入するため、排気管の脈動が副室なしの状態から変化することで、低回転時のトルク低下を緩和するものである。右図は排気バルブが閉じた状態である。
 一般に、「第8戦オランダGPで登場したが、実戦で用いられることはなかった。」とされているが、日本GPでは使用されたようだ。
3 シーズン後公開されたマシン
(1)東京モーターショー
-/RGΓ500-2007(エンジン番号不明)
  スイングアームピボット部形状、スイングアーム補強形状は第3戦でのウンチーニのマシン(プラクティスのみ使用)に酷似している。後サスペンションのロッドは逆Y字型ではなく、1本。フレーム番号2007ではあるが、第8戦で用いられた新2007とスイングアームピボット部の形状が全く異なる。テールカウルの数字は「2」。
  おそらく、第3戦プラクティスで使用されたウンチーニのマシンにマモラ用マシンの外装を装着したものと思われる。
(2)プレス公開
-/X4550(エンジン番号不明)
 1983年シーズン後、複数の雑誌に公開されたSAEC装着エンジンのマシン。シリンダーに「XR4551.X」と浮き彫りがあり、これはもちろん部品番号の一部である。おそらく、「XR4550」シリンダーがSAEC仕様の最初のシリンダーで、XR4551は最初の設計変更を受けたものだろう。 ロータリーバルブカバーの浮き彫りは「12453XR4501」であり、「XR4500」が最初の仕様と考えられるので、これも若干の変更があったようだ。消音器に黄色く「X50」と書かれている。クランクケース前(ダウンチューブと排気管の間)に点火系ブラックボックスが装着されている。車体は第8戦以降用いられた新2007、新2006と同型。右ダウンチューブのクラッチ周辺が若干切り取られており、エンジン搭載位置が下げられている。後サスペンションのロッドは逆Y字型。フレーム番号X4550は、製造番号ではなく部品番号の一部。ステップホルダーに「X452M」と打刻があり、「X4520フレーム用マモラ仕様」の意か。後輪18インチ。フェアリング両側にキャブレター新気導入ダクトが設けられている。
 右端はエンジン前側の2箇所のフレーム装着部の下側で、赤矢印がエンジンのフレーム装着部、白矢印がエンジンを実際に装着するブラケット。

「RGΓ500-××××」というフレーム番号がないことからすると、このマシンはヨーロッパに送られず、日本でのみ使用されたものの可能性が高いように思う。日本GPでのゼッケン1のマシンの可能性もある。

4 現存するマシン
(1) -/X4550(エンジン番号不明)
  3-(2)のプレス公開されたマシン
そのものである。
 
(2) -/RGΓ500-2006(エンジン番号不明)
 イギリスで売りに出されたマシン。バリー・シーンが1984年に使用したものとのことである。同じく売りに出されたもう1台のex-シーンといわれるXR40と説明が輻輳しているが、左のマシンがXR45でRGΓ500-2006だと思われる。
 外観は第3戦プラクティスで確認されたウンチーニの新型マシン、東京モーターショーで展示されたRGΓ500-2007に酷似しおり、おそらくこれらと同型で、第3戦頃にマモラに与えられたフレームと思われる。「2006」という番号は第1戦ですでに用いられたと思われるので、新型フレームも同じ番号を打刻したことになる。これを新2006とする。そして、ウンチーニの2007と同様に、第8戦頃に新新2006にフレーム番号を譲ったものと思われる。

5 XR45の種類                                                SUZUKI

 確認できたフレームを整理すると次の6種類になる。

シーズン前公開マシン、第1戦〜第2戦のマシン、
全日本第1戦〜第2戦のマシン
直線的フレームパイプ、1本プッシュロッド
第3戦ウンチーニのスペアマシン、東京モーターショーの2007、現存する新2006(売り物) XR40フレームに似ているが、スイングアームピボットが通常より前上方、1本プッシュロッド
第2戦で登場したXR40フレーム、第4戦〜の2002 XR40フレーム、逆Y字プッシュロッド
第5戦の2005(XR40フレーム改修) XR40フレーム改修、逆Y字プッシュロッド
日本GPのスペアマシン(X4540-X) スイングアームピボット部補強なし、1本プッシュロッド
第8戦の新2007、第9戦〜の新新2006、シーズン後公開・現存するX4550 最終型、逆Y字プッシュロッド

 最終型にX4550という打刻がある。最後の50は仕様変更・設計変更を示していると思われるので、XR45フレームの部品番号がX4500から始まるとするとX4550は6番目になる。丁度、確認できた種類と同じになるので、上の表の上から順に「XR4500」、「XR4510」、「XR4520」、「XR4530」、「XR4540」、「XR4550」としてみる。そして、推定したフレーム番号を割り振りレースごとにどのように用いられたかを想像したのが次の表である。XR40フレームにXR45の部品番号が与えられたとは思えないが、取り敢えずこのような形で整理してみた。

Rider フレーム番号 SA F I A E Atr Y N B GB S SM 備考 部品番号
Mamola 2002* * R                     シーズン前公開マシンと同型、1本プッシュロッド X4500
2002     R R P P P *         XR40フレーム、逆Y字プッシュロッド X4520
2005         R R R R P P P R* XR40フレーム改修(エンジン搭載位置可変)、逆Y字プッシュロッド
イギリスGP以降スイングアームを変更
X4530
2006 * *                   シーズン前公開マシンと同型、1本ブッシュロッド X4500
2006     *                 改良型フレーム、1本プッシュロッド X4510
新新2006               * R R R * 最終型、逆Y字プッシュロッド X4550
Uncini 2003* *                       シーズン前公開マシンと同型、1本プッシュロッド X4500
2003*   R R R R P *           XR40フレーム(2本線)、逆Y字プッシュロッド X4520
2004 * *                     シーズン前公開マシンと同型、1本プッシュロッド X4500
2004*       P P R *           XR40フレーム(1本線)、逆Y字プッシュロッド X4520
2007*     P                   改良型フレーム、1本プッシュロッド、東京モーターショー展示 X4510
2007               R         最終型、第10戦以降レッジアーニが使用?、逆Y字プッシュロッド X4550
*は未確認。
「R」は「レースで使用」、「P」は「プラクティスのみ使用」。
日本GPでのゼッケン1TはX4540。

6 諸元

  XR45 XR40(参考)
エンジン形式 2ストローク水冷スクエア4気筒
吸気制御 ロータリーディスクバルブ.
ボア×ストローク o 56×50.7
シリンダーポート 排気×1、掃気×7
キャブレター ミクニ36oまたは38o ミクニ36oまたは38o
クランク 2気筒別体、メインベアリングは各ボールベアリング×4
動力伝達経路 各クランク→クランク間ジャックシャフト→クラッチ→変速機メインシャフト→カウンターシャフト
点火間隔 180度(対角線の2気筒が同時点火)
点火方式 CDI
変速機 6速(1〜4速:各6種、5〜6速:各5種) 6速(各4種)
最高出力 PS/rpm 135〜140PS 130〜135/11000
フレーム アルミ
前サスペンション カヤバ製テレスコピック(ブレーキ圧作動アンチダイブ機構付)
後サスペンション ロッカーアーム(カヤバ製ショックユニット下部はスイングアーム)
前ブレーキ 310oφローター×2、対向ピストンキャリパー×2 310oφローター×2、対向ピストンキャリパー×2
後ブレーキ 230oφローター、対向ピストンキャリパー 230oφローター、対向ピストンキャリパー
前ホイール 3.5×16 3×16、3.5×16
後ホイール 4.5×16、4×18 3.5×18、4×18
車重 kg 111〜118(半乾燥?) 117(半乾燥?)
備考:ライダースクラブ誌1984-5に掲載されたデータ、「最高出力126PS/11000rpm、最大トルク7.8kg・m/10,750rpm」は明らかにおかしい。最高出力
  から計算されるトルクが8.2kg・mと7.8kg-mより大きくなるからである。。

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