第7戦ベルギーGP(スパ・フランコルシャン)

 プラクティスはMiddelburgが2分39秒100でポール、以下スペンサー、クロスビー、シーン、ロバーツ、ルキネリと続き、片山は9位。
  レースでは、シーンが好スタートを切りMiddelburgが続くが1周目の終わりではMiddelburgが首位に立ち、シーン、クロスビー、ロバーツと続く。2周目にはクロスビーが、3周目にはロバーツが首位になり徐々にリードを広げる。やや遅れていたスペンサーは追い上げ3周目には3位、7周目には2位に上がる。スタートを失敗したウンチーニも3位に浮上。
8周目には明らかにロバーツの0W61のハンドリングが悪化、スペンサーが首位に立ち、ロバーツは順位を落とし出す。そのままスペンサーが初優勝。ホンダにとって1967年日本GP350cc以来の優勝である。シーンとウンチーニの2位争いはシーンが制し、ロバーツ4位。ルキネリ6位、最速ラップはスペンサー(2分36秒94)。
  左のマシンはプラクティス中のもので、ステアリングブラケットに「2018」と書かれている。「18」がフレーム番号の末尾を表すなら、フレーム番号はNS500F-2218だと思われる。右はレース中のものでフェアリングが明らかに異なる。とするとレースで用いられたのは、NS500F-2219なのだろうか? 「2218」のフェアリングを交換しただけなのだろうか?

第8戦ユーゴスラビアGP(リエカ)

 プラクティスではシーンが1分33秒08でポール、以下、スペンサー、ウンチーニ、クロスビー、Middelburg、ロバーツ、片山、マモラ、ルキネリ。
 
レースではシーンが好スタート、3周にわたって首位。ウンチーニはやや遅れていたが、3周目にはスペンサー(下左の前)に続く3位に上がる。4周目には2人がシーンを抜き、ウンチーニはスペンサーを抜き首位に立つ。ウンチーニはクロスビーを加えた3人による3位争いを尻目にリードを広げそのまま優勝。2位クロスビー、3位シー-ン、4位スペンサー。最速ラップはウンチーニ(1分33秒7)。
 スペンサーのマシンは主ラジエーター/補助ラジエーター冷却気排出ダクトが設けられている。ステアリングブラケットの文字は「2018」だが、第7戦プラクティス時のものとはフェアリングが異なる。NS500F-2218だろうか? 以降のレースでも同じマシンが用いられたようだ。
 右はルキネリのマシンだが、赤いフレームが見えスチールフレームである(レース中かプラクティス中かは不明)。アルミフレームが第6戦で導入されたが、台数が少ないためスチールフレームも走らせたのか、ルキネリがアルミフレームの感覚を好まなかったのかはわからない。

第9戦イギリスGP(シルバーストーン)

    プラクティスではロバーツが1分29秒84でポール、以下ウンチーニ、スペンサー、クロスビーと続き、8位片山、14位ルキネリ。
 レース前に雨が振りスタートが遅れた。コースはほとんど乾いていが、一部濡れた箇所が残っていた。レースでは、1周を終わり片山が首位に立つが2周目にはウンチーニが首位に立つ。4周後にはスペンサーが2位に上がるが、ウンチーニはそのままリードを広げ優勝。2位スペンサー、3位クロスビー、4位レッジアーニ、5位マモラ、6位フェラーリ(XR40)。片山は残り4周でクランクシャフト破損でリタイア。最速ラップはクロスビー(1分30秒5)。
 片山のマシンはアルミスイングアーム。また、補助ラジエーター冷却気排出ダクトが設けられている。

第10戦スエーデンGP(アンダーストープ)

  ランキング2位のロバーツ、シーンはイギリスGPの負傷のため欠場、出場を取り消した時点でウンチーニの500cc選手権獲得が決定した。
 プラクティスはスペンサーが1分37秒72でポール、以下ウンチーニ、片山、ルキネリ。
レースはマモラが好スタートするが、片山(左)がすぐに抜く。レッジアーニとフェラーリは1周目で転倒、スペンサー(右)のNS500はウォームアップ時から点火系不調になりすぐリタイア。スタートでやや遅れたウンチーニは6周目には3位に浮上、3周後には首位に立ちリードを広げるが、21周目に後チェーンスプロケット破損でリタイア、片山が首位に立ちそのまま優勝。2位マモラ、3位クロスビー、5位ルキネリ。最速ラップはマモラ(1分38秒37)。
第11戦サンマリノGP(ムジェロ)

 
プラクティスではスペンサーが2分2秒81でポール、以下ウンチーニ、ルキネリと続き、片山は5位。
 レースではスペンサー(右)が好スタート。片山は2位を走っていたが残り6周で転倒、スペンサーがそのまま優勝、2位マモラ、3位クロスビー、4位フェラーリ、5位Middelburg、6位ルキネリ。最速ラップは片山(2分3秒69)。
 

第12戦ドイツGP(ホッケンハイムリング)

 プラクティスはスペンサーが2分9秒91でポール、以下ウンチーニ、ルキネリ、片山は7位。
 レースはルキネリがリードを奪うが、7周目にスペンサー(左)が首位に立ち、ルキネリはマモラ、ウンチーニに抜かれる。残り2周でスペンサーは点火系故障でペースダウンするが、背後にスズキの2人が迫っていることに気が付かなかった。
そしてヘアピンの進入でスペンサーとウンチーニが接触し2人共転倒、マモラがそのまま優勝。片山は一時2位を走るがブレーキ故障で後退し4位、ルキネリはNS500の異常振動のため7位に後退。2位フェラーリ、3位レッジアーニ。この結果、スズキのメーカー選手権獲得が決定した。最速ラップはスペンサー(2分9秒16)。
 片山のマシン(上右)はアルミスイングアーム、アルミホイール。

 このようにNS500(NS2A)は参戦1年目で3勝するという予想外(ホンダにとっては当然)の成果を挙げた。勝てなかったレースも1年目のマイナートラブルが多く、それが改良された83年型のNS500(NS2B)はさらに素晴らしい速さを見せることになる。

参考 日本GP

 
全日本選手権日本GP500ccに片山、阿部がNS500でエントリーした。写真はプラクティスの時の片山とNS500で、マシンはアルミスイングアーム仕様である。雨天のためか、補助ラジエーター排気ダクトが片山のマシンにしては少ない。レースは台風による悪天候のため中止された。
 

3 シーズン後公開マシン

 シーズン後、鈴鹿サーキットで公開されたマシン。アルミフレーム・CFRPスイングアーム・アルミホイール仕様

ランキング

  Arg Atr F E I N B Y GB S SM A Total
ウンチーニ 8 15   10 15 15 10 15 15       103
クロスビー   8   8 10 8   12 10 10 10   76
スペンサー 10       12   15 8 12   15   72
ロバーツ 15 10   15 8 12 8           68
シーン 12 12   12   10 12 10         68
マモラ   4       6 6 4 6 12 12 15 65
片山 5 2   5 4 3   6   15   8 48
ルキネリ 6     6 6   5 4   6 5 6 43

4 現存する(であろう)マシン                            

(1) -/NS500F-2219(エンジン番号不明)
 ホンダコレクションホールに展示されているマシン。アルミフレーム、CFRPスイングアーム、前CFRPホイール、後アルミホイール、後ディスクローターは通風式。
 1982年ベルギーGP優勝車そのものかどうかは判然としない。
(2) -/NS500F-2220(エンジン番号不明)
  1983年鈴鹿8時間耐久レースで展示されたマシンで外装は83年仕様。アルミフレーム、アルミスイングアーム、アルミホイール、ディスクローターはソリッド。
 おそらく片山のマシン。

(3) -/-(エンジン/フレーム番号不明)
 スチールフレーム。所在非公開。

5 エンジン性能曲線

 おそらく新型排気管のもの。

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