XR34M1とXR34M2

 XR34(1980年型RGB500)その1を2003年7月に、XR34(1980年型RGB500)その2を同年8月に公開し、XR3400、XR3402H、XR3403H、XR34M1、XR34M2の外観上の区別に関する私見を記述していた。ところが、現存するXR34Mに関する多くの記述が私の理解とは逆になっている。

 下左が
XR34M1とされるマシン(リンク)で、下右の1980年シーズン後に竜洋テストコースで公開されたXR34Mに酷似している。

 黄線はシートレールの延長線を、黄点線はスイングアームピボット部付近とステアリングヘッドを結ぶパイプの下側のパイプの延長線を、青点線はスイングアームピボット部後方のパイプ(ダウンチューブ延長部)を示す。白矢印はフェアリングステーのフレーム取付部を、赤線はスイングアームの縦方向の補強パイプを示している。

 下左はXR34M2とされるマシン(リンク)で、第3戦フランスでのルッキネリのXR34M(下右)に酷似している。

 このマシン(XR34M2とされるマシン)と上のマシン(XR34M1とされるマシン)との差異は次のとおり。

黄点線の位置、対地角度が上のマシンと異なり、その結果として黄線との交点も上のマシンと異なる。
●このマシンのフェアリングステー取付部はバックボーン部にあるが、上のマシンは黄点線パイプ上にある。
青点線の対地角度が異なる。
●上のマシンには青矢印が指すフレームパイプがない。MOTOCOURSE 1980-81では500t第7戦イギリスGPで登場した新型フレームについて「it had two less tubes supporting the rocker arm pivot」とあり、 このタイプはイギリスGPで登場したとしている。
●上のマシンでは後サスペンションのプッシュロッドの下端は赤線の後にあるのに対し、このマシンは赤線の前にある(ただし、スイングアーム右側(車体右側)ではこの差異はない)。

 さて、TEAM SUZUKI・179頁では「The first monoshock Suzuki was the XR34M1, first raced in Spain but quickly superseded by the later XR34M2.」とある。この文だけなら、上の第3戦フランスでのマシンは第2戦スペインで登場したXR34M1に酷似したXR34M2であり、上のマシンはXR34M1、XR34M2とは別のマシンという解釈も成り立つ。上のマシンが初登場した時期(500t第7戦イギリス)を「quickly」と表現することが適当なのか疑問があるからである。しかも、同書234頁でこのマシンに酷似したマシンをXR34M2としている。

  しかし、同書187頁で「Randy Mamola used his 1980 XR34-M2 for the Champion Classic race in the USA.」とあるが、このマシン(リンク)は上のマシンと同型である。

 また、右はXR34Mが初登場した第2戦スペインでのマモラとXR34Mだが、XR34M2とされるマシンと同様、後サスペンションのプッシュロッドの下端はスイングアームの縦方向補強の前にあり、フェアリングステー取付部はバックボーン部にある。このように1980年シーズン前半用いられたXR34MはXR34M1とされるマシンと異なる。
 
  以上のことから、私は海外でXR34M1とされるマシンはXR34M2であり、XR34M2とされるマシンはXR34M1であると考えている。同様にモトサイクレットサワダのフェイスブックにあるXR34M2もXR34M1である。

 ただし、実戦においてXR34M2の一部の部品、例えば後サスペンションのロッカーアームがXR34M1に装着されるというようなことがあった可能性はある。XR34M2とされるマシンがXR34M1であっても、一部の部品がXR34M2なのだろうか? 

 なお、XR34M2とされるマシンのオーナーがこのマシンを購入した際に販売者から提供された書類では、このマシンがXR34M2で第2戦スペイン(XR34M登場GP)以降の全てのGPを走ったこととしている。第2戦に登場したマシンはXR34M1のはずであり、この戦歴そのものが疑問なことから、販売者が提供した書類がそもそもの混乱の原因ではないかと思う。

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