4 1968年

 1967年日本GP後、アンシャイト、グレアムとスズキとの話合いが持たれ、1968年は50cc3気筒、125cc4気筒で参戦することが合意された。間もなくレース部門は縮小されたが、1967年日本GPのプラクティスを走った50cc3気筒RP66に替わる50ccV型3気筒RP68の設計・試作が始まった。しかし、1967年2月21日にスズキからGPレース撤退が発表され、RP68は日の目を見ることはなかった。
 ファクトリーチームは撤退したが、アンシャイトからマシン貸与の要望が出され、RK67Uが貸与された。マシン貸与、ライダー=メカニックの体制だったが、アンシャイトは全5戦中、第1戦ドイツ、第2戦スペイン、最終戦ベルギーで優勝、世界選手権を獲得、メーカー選手権をスズキにもたらした。左は2位入賞しタイトルを決定した第4戦オランダGPでのアンシャイト。右はアンシャイトとRK67U。
  

5 諸元等

  RM64X RM64Y RM64YU RK65 RK66 RK67/RK67U
エンジン型式 2ストローク空冷並列2気筒 2ストローク水冷並列2気筒
ボア×ストローク o 31×33 32.5×30
動力伝達方式 おそらくRK65と同じ クランクシャフト中央ギア→ジャックシャフト中央→ジャックシャフト右端ギア→クラッチギア→変速機メインシャフト→変速機カウンターシャフト→スプロケットシャフト
クランクシャフト回転方向 おそらく前方 前方
クランクベアリング - ボールベアリング×4
排気方向 後方 後方
排気タイミング 度 - - - BBDC93.4 ?
掃気タイミング 度 - - - BBDC62.1
吸気タイミング 度 - - - ABDC45-ATDC70
キャブレター ミクニM18? ミクニM18 ミクニM20 ミクニM22
水ポンプ
エンジンオイルポンプ 無→有
変速機段数(ギア比)  10? 10? 12(1.8(2)-1.435(1.478)-1.192-1.037-0.931-0.867-0.813-0.781-0.75-0.719-0.697-0.677、( )内は変更後) 12(RK65の変更後と同じ?) 14
10(1.714-1.375-0.866-1-0.9-0.833-0.774-0.727-0.697-0.677) 12(RK65の変更後
と同じ?)
最高出力 PS/rpm - - - 14.5/16500 16.5/17000 17.5/17250
フレーム - - - バックボーン(スチール→アルミ) バックボーン(アルミ)
タイヤ (前/後)  - - - 2×18/2.25×18
ブレーキ(前/後)  - - - シングルリーディング・2パネル/シングルリーディング・1パネル


 左は1973年に再公開されたRK67エンジン(12段変速機型)で、動力伝達経路がよくわかる。クランクシャフト後方のジャックシャフトのクランクシャフトとつながるギアの左にあるのは回転計ケーブル駆動シャフト、変速機メインシャフト右端前方はオイルポンプ駆動シャフト、変速機カウンターシャフト右端後方は水ポンプ駆動シャフトである。





 RK65(スチールフレーム)、RK65(アルミフレーム)・RK66、RK67、RK67Uの中で、外観上はっきり区別できるのはRK67Uである。他のマシンの写真を下のように並べてみると、A(スイングアームピボット部上下の穴)の有無、B(同ピボット部後方のプレート(後ブレーキケーブルのガイドを固定する))の位置の違いがわかる。
 他にオイルポンプ、排気管の遮熱板の形状・固定方法、フェアリング形状の違い等も識別の材料にはなる。



 

       RK65(スチールフレーム)  RK66(アルミフレーム)       RK67

6 現存するマシン

(1)RK65

-/K5-9(エンジン番号不明)
 オランダに現存するであろうマシン。フレームはスチール製。フレーム番号からすると、藤井敏雄が1965年ベルギーGPで使用したマシン。エンジンはオイルポンプ有の1965年後期仕様。
 写真が掲載された資料によると、1965年USGPでデグナーが使用し、地元ルール(優勝車は一定の金額で買い取り可能)により買い取られたものということだが、フレーム番号、オイルポンプ付エンジンからするとかなり疑問である。
 "TEAM SUZUKI"(by Ray Battersby, Osprey 1982)によると、1965年にRK65がアメリカに送られ、越野晴雄により西海岸での幾つかのレースを走った後、USスズキで展示され、その後、ニュージーランドのロッド・コールマンが入手したということだ。おそらく、このマシンが「-/K5-9」だと思われる。そうだとすると、RK65にしてはおかしい燃料タンクのスズキのロゴも理解できる。
 また、アメリカにRK65のシリンダー、クランクシャフトが現存しているが、「-/K5-9」のスペアパーツの可能性がある。シリンダーの部品番号は「RK65-1211-2」。最後の「2」は設計変更を表しているようだが、1965年後期のマシン/スペアパーツが流出したのであれば納得がいく。
(2)RK66

A 
オランダに現存するマシン。アルミフレームのK5-50〜である。右は1998年のCCTTを走るグレアム。

B K5-162/K5-55

  フレーム番号は打ち直されたものである可能性がある。RK67とクランクケース形状等が異なる。

(3)RK67
A -/K7-55(エンジン番号不明)

 
スズキが保有するマシンで、1967年日本GPでアンシャイトが乗ったもの。下左端は1967年日本GPで撮影されたもので、1973年に再公開された下左のマシンと比較すると、フレームの塗装の剥げ具合等が全く同じなのがわかる。しかし、エンジンは積み替えられているようだ。下中は同じく1973年の状態だが、ゼッケン3は1967年日本GPのアンシャイトのマシンと同じで、フェアリングの青銀の塗り分けラインが水平ではなく前上方に伸びているのも、同GPでのアンシャイトのマシンの特徴。下右、下右端は1997年の状態である。
 1973年に再公開された12段変速機型エンジン(「5 諸元等」参照)は、下左、下中のマシンのものではないようだ。
     
1967年日本GP 1973年再公開時 1997年鈴鹿ヒストリックミーティング

 左は1976年にエルンスト・デグナーが来日した際の写真(※)で、上のマシンと比較するとフェリングは同じようだが、燃料タンク、排気管遮熱板形状が異なる。
 右は1979年に撮影されたものだが、上中、左とは異なるゼッケンを装着している。燃料タンクの「SUZUKI」のロゴは左と同じだが、後部上端に凹みがある。また、フレームパイプに巻かれたダンパー、テープの位置が、上左、上中とは異なる。 
 このようなことからすると、「-/K7-55」以外にも、少なくともマシンが1台、エンジンが1基、スズキに現存する可能性がある。

B エンジン/フレーム番号非公開
 エンジン/フレーム番号(非公開)等からすると1967年世界GPで実際に使用されたもの。水ポンプは装着されておらず、クランクケースの装着部には蓋がされている。右クランクケースカバーの厚みがRK66と全く異なる。クランクケース後部左の形状はRK66と大きく異なる(下右)。前後ブレーキはRK66と共通だが、後クッションユニットはRK67用。


C
 エンジンのみ(エンジン番号不明)
   オランダにRK67エンジンが現存している。写真はこちらを参照されたい。

(4)RK67U

K7-5/-(フレーム番号不明)
 1968年にスズキからアンシャイトに貸し出され、そのままアンシャイトが保有するマシン。エンジン番号は私が写真から読み取り確認したものなので、確実ではない。エンジンは14段変速機型。

 

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