0W35(1977-78年型YZR500) honda
1 パワーバルブエンジンの登場時期
左は
オランダGPでのベーカーのマシンで、カバーが少し外れている。ただし、このマシンのエンジンはパワーバルブ仕様ではないようだ。 なお、このマシン、フェアリングに「YAMAHA」のロゴもなく、ゼッケン下のスポンサーステッカーも見当たらないことから、スペアフェアリングを装着したか、あるいは新たに持ち込まれたマシンであり、プラクティスの初期で撮影されたものと思われる。 右もオランダGPでのベーカーのマシン。これがパワーバルブ仕様のエンジンと思われる。このマシンがレースを走ったようだ。 |
「フランスGP終了後〜YZR500用のパワーバルブ一式が、機内持ち込み手荷物として、ひとりのエンジニアとともにヨーロッパに渡った」とあるが、1977年型0W35をパワーバルブ無仕様からパワーバルブ有仕様にするためには、パワーバルブ付きシリンダー、パワーバルブ作動用サーボモーター、CDIユニット(パワーバルブ作動対応)等の装着だけでは済まないと考えられる。 ※1977年のパワーバルブ仕様はスライド(ギロチン)型バルブではなく鼓型バルブだったことが前提。 左はTZ750のクランクケースで、スタッドボルトがクランクケースに刺さっている。これにシリンダーを通し、さらにシリンダーヘッドを被せ袋ナットで締め付ける、いわゆる「共締め」。 右は1977年型0W35の公表写真。TZ750と同様に共締めで、赤い袋ナットが見える。 |
以下、0W35のパワーバルブ無仕様を単に「0W35」、パワーバルブ仕様を「0W35K」と記す。 |
左は1978年型0W35Kのヤマハ公表写真で、シリンダー/シリンダーヘッドのクランクケースへの組付け方は1977年型0W35と異なる。 黄色矢印の先にナットが見え、シリンダー前側が分離締めであることが分る。シリンダーにパワーバルブを収めるため、そして各気筒のパワーバルブを連結するためと考えられる。 シリンダーヘッド後側の赤矢印は共締めの袋ナットで、青矢印はシリンダーヘッド組付用のナット。 また、クランクケースのクランクセンターの上部形状が1977年型0W35と異なり、クランクケースの型が変更されていることが分る。 さて、右は、1978年第1戦ベネズエラGPでのロバーツの0W35。 |
V | Atr | A | I | F | N | B | S | Fin | Cz | GB | |
ベーカー | 2 | - | 3 | 4 | 3 | 5 | 2 | 3 | 12 | R | 2 |
セコット | 4 | - | - | - | - | - | - | 2 | 1 | 1 | R |
さて、左は1977年第1戦ベネズエラの写真。手前のゼッケン32・ベーカーの0W35のエンジン周りにカバーが掛けられているが、その奥のマシンにはカバーがない。 1977年2月の報道陣公開の時に0W35のフェアリングを外したマシンもありエンジンもせているのだから、サーキットの現場でエンジンを隠す理由は「このエンジンが(シーズン前公開のマシンとは異なる)新型」、「新型エンジンであると思いこませたい」だろう。 カバーの理由として、埃っぽい土地なので、キャブレター周りへの埃の堆積を防ぐためという可能性もあるが、それなら写真の2台のマシン両方にカバーを掛けるはず。 |
ヤマハのこちらの頁では「フィンランドGPでベールを脱いだ」 https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/yamaha-motor-life/2011/11/ypvs.html とあるが、当時、パワーバルブであることは公表されていなかったし、報道もなかったにも関わらず「ベールを脱いだ」とは? レーサーズ外伝 Vol.01でも「YPVSが初めて投入されたのは’77年世界GP第9戦フィンランドGPに出場した0W35Kで、ジョニー・チェコットのライディングにより優勝を飾った」 少なくとも、フィンランドGP以降、0W35Kがレースを走ったことは間違いないようだ。 |