TEAM SUZUKI
標題は1982年に出版されたTEAM SUZUKI by Ray Battersby, Osprey 1982である。レーシングマシン、あるメーカーのレース活動について書かれた本で、これに並ぶものといえば、Mike Hailwood et la Honda-6 by Jacques Bussillet, Solar 1994ぐらいだろう。私がTEAM SUZUKIを入手したのは1983年だが、初めて本書を広げた時の興奮を今でも覚えている。RS65、RP66の存在はこの本で初めて知ったし、1970年代〜1981年のレース活動についても詳細に記述されている。
もちろん、本書の記述に間違いがないわけではない。著者が「初めは1970年代以降について書くつもりだった」と書いていることからも分るように、間違いは1960年代以前の記述に多い。そして、スズキのレース活動に携われた中野広之氏が、自身の正確な記録を基に「日本モーターサイクルレースの夜明け」をまとめられたので、TEAM
SUZUKIの1960年代の記述の価値も減少したが、1970年代以降の特に500cc、750ccマシンの記述については今でも新鮮である。スズキのレース活動に関する多くの記事がTEAM
SUZUKIを引用しているのも当然である。例外は日本の雑誌屋で、下らない誤りを今でも続けている(例1、例2)。
実は本書を初めて読んだとき、正直なところこれだけのものを英国人がまとめたことに悔しさを感じた。それまで雑誌の間違いだらけの次元の低い記事に慣れ、それより私の方が詳しいということに満足していたが、そんなレベルではだめだということを痛感した。私が本サイトでつたない記事を書いているのも、「TEAM
SUZUKI」と「日本モーターサイクルレースの夜明け」があるからである。
さて、私が本サイトで「TEAM SUZUKI」を引用してから、多くの方から入手方法の問い合わせを受けたが、残念ながら既に絶版になっており、粘り強く海外の古書サイト、オークションサイトを覗くぐらいしか入手方法はなかった。しかし、最近になって2008年夏頃に再出版されるという情報を著者自身から得た。私が25年前に購入したものはかなり傷んでいるので、私も新刊を入手したいと思っている。それだけの価値がある本である。著者のRay Battersbyに敬意を表すると共に、本書を世に出していただいたことに感謝したい。
2008年9月末に発売された。購入希望者は、価格、送料、為替レートと相談して購入先を決められたい。著者自身からサイン入りを購入するのであれば、こちら。 |
追記
上で、間違いが1960年代以前の記述に多いと書いたが、1960年代以前の写真説明の明らかな間違いの例を示す。人名の記述で不明確なものは省略した。本文中の間違いはこれらとは別である。どうも著者は「日本語」が弱点のようで、日本のスズキ関係者への取材時の意思疎通が不十分だったのではないかと思われる。
P10 Asama Plains races | ライダーの服装、風景からすると富士登山レースではないか。 |
P24 Nakano | Shimizuの誤り。 |
P42 RM64 at Hockenheim | RM63 at Daytonaの誤り。1964年第1戦USGPである。RM64は第2戦で登場 |
P46左 Itoh | Morishitaの誤り。 |
P46左 1963 West German GP at Hockenheim | 1963 Belgian GP at Spa Francorchamps の誤り。 |
P46右 RT63 | RZ65の誤り。1965年マン島TTである。 |
P54 Falcon Cliff hotel, RZ65 | マシンはRZ63Uの誤り。1963年日本GP前、スズキ本社で撮影されたものではないか。 |
P58上 at Brno(チェコスロバキア) | at Sachsenring(東ドイツ)の誤り。 |
P75 RT63 | RM63の誤り。フェアリングにフレーム番号M3-6が書かれている。 |
P203 (P202左上写真) RJ65 | RP66の誤り。水ポンプが装着されていること、クランクケース形状がRJ66と異なること、横にあるRP68とエンジン大きさが同じことから、これがRP66と分る。 |
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