1980年日本GP                                                                                             SUZUKI

 ヤマハは1975年日本GPの後、500ccファクトリーマシンを全日本選手権で走らせていなかったが、1980年日本GPには出場、スズキとヤマハの対決が実現した。
 スズキの河崎裕之、岩崎勝に与えられたのは夫々XR34M2、XR34M1で、岩崎のマシンのスイングアームは補強のない新型だった。ただ、"Team Suzuki"に掲載されたスズキのワークショップ内の写真には同じく補強のないスイングアームを装着したXR34M1が写っている。撮影者のクロスビーが来日したのは1980年の早い時期なので、このタイプは日本GPのかなり前からテストされていたようだ。また、河崎、岩崎の両方のマシン共、前ゼッケン向かって左に孔が開けられダクトが後ショックユニットに伸びている。
河崎のXR34M2 岩崎のXR34M1
    
排気管はB型。 前輪は16インチ、スイングアームに補強はない。排気管はB型

 レース(17周)では河崎、岩崎が好スタートを切るが高井(0W48)が第2コーナー出口で3位に上がる。1周終わりのホームストレートは河崎がトップで通過するが、高井にぴったりマークされる。2周目に首位に立った高井はそのままリードを広げ独走。河崎はTZ500に乗る水谷勝、毛利良一、TZ750に乗る佐藤順造にも抜かれるが、13周目、水谷がヘアピンでクラッチ不調のため転倒、他の2人も巻き込まれ転倒、河崎が2位に浮上。レースはそのまま高井が独走で優勝、2位河崎、3位は追い上げた水谷。岩崎は6周目にマシントラブルでリタイア。

3 シーズン後公開されたマシン
 シーズン後、竜洋テストコースで右のXR34M2が公開された。排気管はB型、前後18インチホイール。  

4 1981年(2023年1月加筆)

   1981年世界GPでスズキファクトリーはXR35(RGΓ500)を走らせたが、世界GP以外ではXR34Mを走らせることもあった。また、HartogにXR35ではなくXR34が与えられた。

 (1) トランスアトランティック
 マモラがXR34M2、クロスビーがXR34M1に乗った。akioka on Twitter: "どちらも1980年後期型XR34Mにしか見えないんだが… 英米対抗戦自体はGPシーズン前半に行われるのが通例だから、最新型XR35では参戦しなかったのかしら?" / Twitter なお、チームスポンサーがインガソル、シェル(1980年はテキサコ)なので1981年シーズンと分る。

(2) Champion Classic(ラグナセカ)
 マモラがXR34M2に乗った。Mamola’s “Antique” Herron Suzuki RG500 – Rider Files (wordpress.com)

(3) 世界GP
 HartogにXR34が与えられたが、彼はXR34エンジンをニコバカーフレームに搭載したマシンを使用した。
 Hartogがシーズン序盤で引退すると、フランコ・ウンチーニにXR34M2が与えられた。 Franco Uncini (highsider.com)
 
5 現存するマシン

(1)XR34H
-/RGB500-1007(エンジン番号不明) -/RGB・500-1010
(エンジン番号不明)
RGB500-1101/RGB500-1101?
スズキが所有するXR3402H。前輪は18インチ。燃料タンク前端に「G.Rossi 02」と書かれている。排気管はA型。



ある販売店に展示され
ていた、おそらくXR3402H(390万円)。前輪は16インチ。排気管はB型。
"TEAM SUZUKI"によると、エンジン番号1101、フレーム番号
1101のXR34Hが現存しているとのこと。おそらく下の2台のうちのいずれかだろう。
左は1998年CCTTでクロスビーが乗ったマシン。右はイギリスで£65,000で売りに出されたマシン。排気管は何れもB型で、前ブレーキキャリパーはXR35のもの。両車のフェアリングのスポンサーステッカーが異なるが同一マシンの可能性がある。右の特徴からするとXR3403Hのようだ。

(2)XR34M

RGB500-1103/RGB500-1103? -/-
(エンジン/フレーム番号不明) 
-/RGB500-1108
(エンジン番号不明)
"TEAM SUZUKI"によると、エンジン番号1103、フレーム番号1103のXR34Mが現存しているとのことである。この1998年CCTTでマモラが乗ったマシンがそうなのか? XR34M1。キャブレターは装着されていない。 XR34M1だが、エンジンはXR22。TEAM NAVA OLIOFIAT XR22 (rgb500.com) チームガリーナからスズキに返却される際、旧型エンジンを搭載したものか。某所に置かれていたが、現在は浅間記念館に展示されている。こちらに記事がある。

 現存するマシンのフレーム番号からすると、チームガリーナのXR34Hフレームは実はXR27という仮説も成り立つ。
 また、各チームに与えられたマシンはチームに固定されたものではなく、スズキの指示の下、各チーム間でマシンのやり取りが行われたようだ。

5 諸元

  XR34H XR34M
エンジン形式 2ストローク水冷スクエア4気筒
吸気制御 ロータリーディスクバルブ.
ボア×ストローク o 54×54
シリンダーポート数 排気×1、掃気×7
キャブレター ミクニ36o(チームガリーナは37.5oも使用)
クランク 4気筒別体、メインベアリングはボールベアリング×1、ローラーベアリング×1
動力伝達経路 各クランク→クランク間ジャックシャフト→クラッチ→変速機メインシャフト→カウンターシャフト
点火間隔 180度(対角線の2気筒が同時点火)
点火方式 CDI
変速機 6速(1〜4速:各4種)
最高出力 PS/rpm 128/10800
フレーム スチール
前サスペンション カヤバ製テレスコピック(ブレーキ圧作動アンチダイブ機構付)、インナーチューブ径40o、ストローク120o、エアバルブ付
後サスペンション 2本ショック(カヤバ製) ロッカーアーム(カヤバ製ショックユニット下部はスイングアーム)
前ブレーキ 310oφローター×2、対向ピストンキャリパー×2(チームガリーナはブレンボ製)
後ブレーキ 220oφローター、対向ピストンキャリパー
前ホイール 2.5×18、2.5×16
後ホイール 4×18
車重 kg 143(半乾燥?)

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