RC144Eの問題点

 なぜ、RC144Eは第2戦で登場しただけで終わったのだろうか?

1 オーバーヒート 

  RC144Eが第2戦に登場、オーバーヒートしたことから、これが原因という説がある。しかし、シーズン前、第2戦の写真ではフェアリングの冷却口は非常に小さい。4ストロークエンジンで特に冷やす必要があるのはシリンダーヘッドの排気ポート、点火プラグ周りであることから、このようなフェアリングでも十分冷えると考えたのだろうか。しかし、4ストローク空冷エンジンは、実際には油冷である。
 ガスバーナーの炎に一瞬、手をかざしても火傷はしないが、100度の熱湯に手を一瞬漬ければ火傷する。反対に30度の空気で冷やすより100度の油で冷やす方がよく冷える。これだけフェアリング開口部を小さければ、油温が上昇するのは当然だと思う。ただ、第2戦のプラクティスでわからなかったのだろうか(天候は?)。

 第3戦以降の2RC143E/RC144Fのフェアリング開口部はどんどん大きくなった(大きくする必要があった)。RC144Eであってもフェアリング開口部を大きくすれば問題はなかっただろう。

2 エンジン出力、エンジン故障

 「4バルブ」で書いたように、この頃のホンダレーサーはそれほど4バルブの優位性を示していたわけではないと思う。河島氏の当時の手記ではRC144Eについて「従来エンジンよりパワーこそ上回るものの、耐久性に疑問があることがわかった」ということである。また、「バルブ系の調整をどこでもできるようにと、タイミングを合わせる箇所を多くしたが、これが故障の原因となった」という説もある。
   ホンダの技術者だった八木静夫氏の意見については別ページを参照されたい。

 このようなことから、おそらくRC144Eが消えていったのは出力の問題ではなく、機構的な問題だったではないかと思う。
 最後に、これは私の全くの思いつきだが、、本田社長が2バルブを嫌ったため、走らそうにも走らすことができなくなってしまったという説を提案しておこう。