RC144Eのカム駆動方式

 1961年シーズン前、荒川テストコースで公開されたRC144E/RC144Fのカムシャフト駆動は明らかにベベルギヤ・シャフトによるものである。また、現存するRC144E0002(右写真)も同様である。しかし、当時ホンダの技術者だった八木静夫氏の書かれた「世界二輪グランプリレースに出場したホンダ レース用エンジンの開発史」(1994 HONDA R&D Technical Review)ではRC144について「カムシャフト駆動はクランクシャフトのセンタからのギヤトレーン方式を採用し」とある。これはどのように考えたらいいのだろうか?

 前述のペーパーによると「1960年8月に設計を開始、9月には早くもテストに入った。〜出力の持続性に欠け、〜原因は、その後のエンジン開発でしばしば苦労させられたギヤトレーンのカムシャフト駆動方式にあった。」という。また、1961年、RC144Eのピンチヒッターとなった2RC143Eの開発開始時期は1961年4月とある。したがって、RC144Eのテスト開始から2RC143Eの開発開始まで6〜7箇月あったことになる。これだけの期間があれば、当初はギアトレーンであったものをベベルギヤ・シャフトに設計変更することは考えられないことではない。またギヤトレーン型とベベルギヤ・シャフト型を並行して開発したとも考えられる。あるいは・・・