空気抵抗低減のメリット
グランプリ イラストレイテッド1987年1月号ではホンダへの取材記事で「風速50m/secの時、スクエア4のエア・ドラッグは39kgであった。たとえばこれを36kgにすると、充分に10PS程度のメリットがあるという。ホンダの考えたV型3気筒エンジンの場合、ほぼ250クラスのマシンと同じ34kg。15PSくらいのメリットがあるという。」とある。
ところが、風速50m/s時のドラッグ(空気抵抗)39kgと36kgの必要出力差を計算すると
50*(39-36)/75=2PS
にしかならない。
270km/h程度でも
2*(270/180)^3=6.75PS
である。「10PSのメリット」は何のことなのだろうか。
車重を考慮してみる。
NS500の半乾燥重量120kg、出力120PSでライバルの4気筒より10kg軽量、10PS少なく、ライダー体重70kg、燃料10kgとするとパワーウェイトレシオは
NS500:(70+10+120)/120=1.67
4気筒: (70+10+130)/130=1.62
NS500のパワーウェイトレシオを4気筒並にするにはその出力を124PSにすればよい。270km/hでの空気抵抗の出力ロスの差が6.75PSであるから、この速度域でやっと10PS程度のメリットが生まれることになる。しかし、多くのサーキットでこの速度を記録するのはごく一部の区間であり、ほとんどの加速区間では10PSのメリットはない。
なお、NS500の180km/hでのドラッグ34kgで計算すると180km/h、270km/h時の4気筒との必要出力差は3.33PS、11.25PSとなる。パワーウエイトレシオ差による出力メリット4PSを考慮すると、それぞれ3.33+4=7.33、11.25+4=15.25PSのメリットがあることになる。
もちろん、サーキットでの加速時間はパワーウエイトレシオと空気抵抗だけで決まるわけではない。むしろ、NS500の直線の早さはこれら以外の要因にもあったようだ。