2 アイドリングストップ車の過大評価
JC08モード1204秒中、アイドリングは11回で、各回のアイドリング時間は
26 7 12 35 43 6 45 76 65 18 14 秒で、計347秒である。
エンジン再始動時、ガソリン噴射量が増加する。また、始動装置作動により電力を消費するので、発電に要する燃料消費量が増大する。したがって、十分なアイドリング時間を確保できなければ、アイドリングストップ仕様車 (以下、ISS)のメリットは減殺される.
最近の車は、ISS仕様車に限らず、バッテリー充電方式が、かつての「常時満充電志向」ではなく充電制御を採用しており、放電と充電を繰り返すが(http://panasonic.jp/car/battery/jyuden/ju01.html) 満充電にならない。したがって、電力消費量が増大すれば必ず燃費が悪化する。 |
渋滞路では数メートル〜数十メートル単位で発進・停止を繰り返すことがある。また、駐車場に入る際に一時停止し10m程度走ってすぐ停止→駐車するようなことも普通にある。このような条件が続けば、むしろISSの燃費は標準車より悪化する。
参考1 始動に要する燃料の量 アイドリング時の燃料消費量は、環境省の「エコドライブのすすめ」では130cc/10分となっている。http://www.env.go.jp/air/car/ecodrive/susume.html 詳しい数字が省エネルギーセンターのサイトにあり、右図が示されている(http://www.eccj.or.jp/recoo/annai/page_annai02.htmlから引用)。 2000tの車で、0.221cc/秒→0.221×60×10=132.6≒130cc/分 ということのようだ。 さて、この図では、「始動時にガソリン消費量が1.05cc増加するので、5秒以上アイドリングするならアイドリングストップした方がよい」としている。つまり 始動装置作動→電力消費量増大→発電に要する燃料消費量増大 は考慮されていない。 |
始動時のスタータ作動時間1秒/回、スタータ作動中の平均電流を300A、同平均電圧12V、ガソリン低位発熱量44MJ/kg、ガソリン比重0.73、エンジン平均熱効率20%、急速放電・ 発電・充電効率50% (急速放電時の効率は低い)とすると、
1×300×12/(1000×44×0.73×0.2×0.5)=1.12
始動1回に消費する電力量に相当するガソリンは1.12ccになる。
始動自体で直接増加するガソリン量1.05ccを加えると2.17cc→10秒アイドリング相当 になる。
参考2 バッテリーの収支
排出ガス測定法では「周期的制御自動車」、つまり
排出ガス等の排出量に影響を与える可能性のある制御を周期的に行う自動車(バッテリ保護のために周期的な強制充電等を実施するもの等をいう。)であってJC08Cモード法及びJC08Hモード法による排出ガスの測定中に1回以上当該制御が行われる自動車以外のもの(原文のうちDPF、触媒に関する分を削除)
について測定結果の補正を行うこととなっている。したがって、テスト中に「1回」だけ制御が行われれば補正は必要ない。
したがって、テスト中に1回のみ充電モードになるように、テスト前のバッテリー充電状態を設定し、テスト終了後は充電開始直前状態(放電が進んだ状態)になれば、充電に必要な燃料が節約できることになる。 少なくともテスト前とテスト後の充電状態の差が「放電が大」になれば、JC08モード燃費を上積みすることができる。もちろん、このことはISSでない標準車についても言える。
これによるJC08モード燃費上積みはせいぜい1〜2%と思われるが・・・元々、ISSの標準車に対するJC08モード燃費改善効果が10%前後(ヴィッツクラス)なのだから無視できない上積みである。
参考3 ISSのバッテリートラブル
ISSのバッテリーに、「納車後半年〜1年とバッテリー寿命には程遠く、走行距離も少ないにも関わらず、充電受入性能が低下し、アイドリングストップしなくなる」トラブルが発生することがある。多くの場合、ちょい乗りが多いユーザーに発生しているようだ。放電が続いた後に充電 するような条件では、電解液の上下混合が起きづらく、いわゆる「成層化」状態になることが原因とされている(参考:自動車工学2015-10)。 最近はバッテリー自体も改良されてはいるが・・・電池メーカーのレポートも参考に。http://www.gs-yuasa.com/jp/technic/vol9_2/pdf/009_02_016.pdf
参考4 自主アイドリングストップ
私のヴィッツ1.0F、ロードスターS、いずれもISSではないが、信号待ち等でアイドリング時間が30秒以上になりそうな時は、アイドリングストップするようにしている。極度の渋滞に巻き込まれた場合等、アイドリングストップ条件が続くときは、充電能力も考慮してアイドリングストップしないこともある。
旧型ヴィッツ1.0F(充電制御車)の場合、この方法で使用して5年(2回目の車検時)で安全を見てバッテリーを交換した。