得点制
今のような世界選手権が始まったのは1949年であるが、世界チャンピオンを決定する得点制は以下のように変更されている(推定を含む)。
1949年
順位による点数:1位10点、2位8点、3位7点、4位6点、5位5点
レース中の最速ラップ者(車)のポイント:1点
有効得点:500ccは6レース、350ccは5レース、250ccは4レース開催されたが、いずれもベスト3戦の合計点数で決定された。125ccクラスは3レース開催され3戦の得点全てが合計された。
1950〜1964
順位による点数:1位8点、2位6点、3位4点、4位3点、5位2点、6位1点
最速ラップに与えられる1点は廃止
有効得点:5レース以上開催された場合、行われたレース数の過半数になる最初の数のレース数をカウント。
例:レース数が5なら過半数となる最初の数は3である。あるライダーの獲得した点数が8、6、4、1、8なら、「8+8+6=22」が有効得点になる。レース数が6なら過半数となる最初の数は4。
有効得点が同点の場合の扱い:有効得点に計上しなかった得点の最大のもので決定する。上の例であれば、「4」が有効得点に計上しなかった得点の最大のもの。この「4」をライバルの同得点と比較する。
1965〜1969
得点が同点の場合の扱いが変更:優勝回数が多い方が上位、優勝回数が同じ場合は2位の回数が多い方が上位、以下同じ。
1970〜1975
順位による点数が変更:1位15点、2位12点、3位10点、4位8点、5位6点、6位5点・・・10位1点
1976
有効得点制の変更:シーズンを前半と後半に分け、前半、後半それぞれで有効得点を計算する。
例:レース数が10、あるライダーの獲得した点数が15、12、6、8、15、12、0、10、5、1とすると、前半の有効得点は、「15、12、6、8、15」から過半数となる最初の数の3レース分を合計して「15+15+12=42」、後半の有効得点も「12、0、10、5、1」から3レース分合計して「12+10+5=27」。年間の得点は前半と後半の有効得点を合計して69点となる。
1977〜1987
有効得点制は廃止:全レースの得点の合計で決定する。
1988〜1990
順位による点数が変更:1位20点、2位17点、3位15点、4位13点、5位11点、6位10点・・・15位1点
1991
有効得点制導入:「全レース数−2」のレース数の得点をカウントする。
1992
有効得点制は廃止:ポイントは1位20点、2位15点、3位12点、4位10点、5位8点、6位6点・・・10位1点。
1993〜
順位による点数が変更:1位25点、2位20点、3位16点、4位13点、5位11点、6位10点・・・15位1点
参考1
1967年の250ccの個人世界選手権は全13戦を終えマイク・へイルウッド(ホンダ)とフィル・リード(ヤマハ)の有効得点は50点の同点だった。個々のポイントは次のとおりである(○数字は有効得点にカウントする得点)。
ヘイルウッド:0、0、C、G、G、E、0、4、G、G、0、G、0
リード :G、E、E、E、0、0、G、G、0、0、G、6、0
レギュレーションからすると優勝回数の多いヘイルウッドが当然チャンピオンのはずだが、当時の雑誌には「FIMの裁定に持ち込まれた」という記述がある。これは、すでに1964年にレギュレーション(本来フランス語版)は改定されていたが、英語版の改定版が発行されていなかったための混乱である(「Yamaha−All Factory and Production Racing Two Strokes」(by
Colin Mackellar,
The Crowood press 1995)。
参考2
チャンピオンを争う2人の成績が完全に同じになったときはどうするのか?実は過去に2回そのようなことがあった。1968年の250ccと1972年の50ccクラスである。
この場合、2人が同時に入賞したレース(2人のうちどちらか1人でもリタイアしたレースは除外)のレースタイムを合計してチャンピオンが決定された。1968年の250ccの例を示す。ビル・アイビー、フィル・リード、2人のマシンはいずれもヤマハRD05Aで、チームメイト同士の争いはリードに軍配があがった。
レース | ビル・アイビー | フィル・リード |
オランダ | 55分23秒9 | 55分24秒 |
東ドイツ | 46分44秒 | 46分44秒1 |
チェコスロバキア | 50分53秒9 | 50分39秒4 |
イタリア | 44分26秒4 | 42分35秒4 |
合計 | 3時間17分28秒2 | 3時間15分22秒9 |
現在は、最高順位を最後に記録したレースの上位ライダーが優先するように変更されている(motobpウエブサイト)。
「In the event of a tie in the number of points, the final positions will be
decided on the basis of the number of best results (number of first places,
number of second places, etc.). In the event that there is still a tie then, the
date in the Championship at which the highest place was achieved will be taken
into account-with precedence going to the latest result. 」
ただし、いつ変更になったのかは不明(1970年代の可能性もある)。
「RACERS
vol1」(2009三栄書房)では1983年500cc最終戦前のスペンサーとロバーツ、2人の形勢について次のように記述している。
「あのとき(ユーゴスラビアGP)でチームオーダーに従って4番手のロバーツに順位を譲っていれば、ロバーツは3点差でこのレースを迎えることができた。そしてロバーツがここ(サンマリノGP)で優勝すればスペンサーと同点。優勝回数も2位以下の入賞回数も全く同じになり、最終戦の勝者(注:前述のように「最高順位を最後に記録したレースの上位者」が正しい。1983年の500tクラスは結果的にそれが最終戦になるだけ)を優先する規定によりロバーツがチャンピオンを獲得できたはずである。」 確かにスペンサーが2位なら2人の戦績は全く同じになり、現在のルールであれば最後にロバーツにより優勝が記録されたサンマリノGPの順位が優先する。問題はいつルールが変更されたのかだが、記者はどうやって確認したのだろうか。 |