暫定ポール

 ポールポジションは予選で1位だったライダーがスタートする位置で、昔はスタート前にその場所に旗を立てたので、「旗竿の場所」の意でそういうようになった、と昔雑誌で読んだことがある(真偽のほどは?)。

 さて、表題の「暫定ポール」とは予選の途中でトップに立ったことをいうのだが、1990年頃にF1の放送で使い出したように思う。しかし、

マラソンの10km地点の順位が「暫定優勝」だろうか。
阪神タイガースは何回「暫定優勝」したのだろうか。

いや、最近、サッカーやゴルフのテレビ中継、新聞記事では「暫定優勝」と言わずに「暫定首位」と言ったりする。

  「暫定」は「暫くの間、定める」ということだろう。例えば「暫定レギュレーション」は「正式な(または長期間続く)レギュレーションに移行するまでの間のレギュレーション」という意味になると思うが、「移行するまでの間」は変更しない。

  「暫定ポール」とアナウンサーが叫んだ直後に首位が変わるようなものが「暫定」なのだろうか。金曜日の予選が終わり、土曜日にも順位が変わるかもしれないのに「暫定」なのだろうか。単に「首位」と言えば済むことである。むしろ、土曜日の予選が終了した時の首位について「暫定ポール」というなら理解できる。普通はそのままポールが確定するのだが、何かの問題があって順位が覆る可能性があるからである。同様に、レース終了直後の順位を暫定順位というのも正しい。車検等が終わっていないからである。ただ、「暫定」より、「仮」の方が適当と思われるが。

 言葉は単に語感がよいから使われるのではない。言葉には物事を正確に伝えるという大事な役割があるが、「暫定ポール」、「暫定首位」といった言葉が使われると、真実をありのままに伝えよう意思が感じられなくなってしまう。実際、「暫定○○」を使うテレビ、新聞、本、雑誌の記述には間違いが多く、初心者にとって、出来の悪い記者、記事を選別するために非常に役に立つ言葉といっていいだろう。

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