RACERS vol06

 

6頁
○「TZ500でプライベート参戦していた浅見貞夫だ。」
22頁
○「アルミフレーム+後方排気のTZ500改を」

 ライター氏はこれらのマシンをTZ500だと考えているが、vol02の記述のように0W53P。

8
○「'78年からはボアを1mm広げたKR350も投入し」

 1oはもちろん10mmの間違い。

12頁上
○「ジャック・ミドルブルグ(RG500)」

 1980年のミドルブルグのマシンはRG500ではなくTZ500。1980オランダGPで優勝した時も同じマシン。

17頁
○「その燃料タンクと、〜サイドプレートとは、6本のボルトで留まっている。ヒザがスムーズに動くように、最終的にはそのボルトは皿ネジとなった。」

 「皿ネジ」が用いられたのは、シーズン前公開写真のマシン及び8頁の発表会のマシン(この写真では分らない)である。
 17頁写真のマシンはこのマシンに酷似しており、実戦で走ったマシンとは異なるようだが、ライター氏はこのマシンを1980シーズン最終型と考えたようだ。実戦で走ったマシンは6角トラスネジが用いられ ており、11頁(おそらく第2戦スペイン)、12頁(第7戦イギリス)の写真で少なくとも皿ネジではないことが分る。
 
  右写真は1982年型KR500のサイドプレート固定ボルト。

18頁
○「その燃料タンクをアルミ地のままにした理由は、〜修正時に、通常の硬質アルマイト塗装が施されていると、その塗膜を剥がすだけでも熱や傷が入ってしまう。」

・「硬質アルマイト塗装」というものがあるのだろうか。「(着色)硬質アルマイト」と「塗装」は別物のはず(アルマイトについてはこちら)。
・アルマイト加工しない理由は分るが、着色塗装しない理由は外観上のもの。91頁の清原氏の回想「あのアルミタンクにはマイったな。見ためはアルミの地肌がきれいやなと思ったが、乗ってみると擦れてツナギが真っ黒になってしまう。〜その後をクリアをかけるようになったけどな。」とあるようにクリア塗装は施していた。

23頁
○「(スズキについて)RGΓとなっていた。アルミ角断面フレーム、リンク式リアサスペンション」

 1981年型RGΓ500はスチールフレームが主でアルミフレームはシーズン中盤オランダGPで姿を現し、次戦のベルギーGPからレースに出場。乗ったのはマモラのみだが、全てのRGΓ500がアルミフレームであるかのような記述はいかがなものか。

28頁
  コース図左上の最終コーナー(WOODCOTE CORNER)にシケインがあるが、シケインを用いるのは4輪で、2輪ではシケインは用いない。

28〜31頁
 ミドルブルグのマシンがRGB500になっているが、もちろんRG500の誤り。

41頁
○「ヤマハはこの第6戦からEファン・ドルメンにも、第4戦からはチーム・アゴスチーニのロッシもスクエア4を与えていて、ファクトリーマシンは計6台に」

 ロッシは第4戦でスクエア4の0W60を与えられるが、プラクティスで転倒しレースは欠場、第5戦は0W60で出場したが、第6戦オランダ以降はTZ500Jに乗った。したがって「第4戦〜計6台に。」は「ファクトリーマシンは計5台に。」の誤り。

42頁

○「第10戦スウェーデンGPでは片山が日本人初のGP500優勝を果たした。」

 1975年オーストリアGP500で優勝した金谷秀夫が忘れられている。

48頁
○「 〜フレーム内にも8ℓほどの燃料を搭載した。ただし、これは「燃料は単一の構造体に入れる」というレギュレーションに違反していた可能性が高い。〜もし、'82シーズン、コーク+KR500が表彰台に登っていたら、レース後の再車検で指摘・問題になっていたかもしれない。いまだから語れるエピソードだ。」

 
  分割された燃料タンクが仮にレギュレーション違反だったとしても、シーズン序盤ならともかく、シーズン後半のGPでのプラクティス前車検で車検員が気が付かないはずがない。排気量超過であれば、特定のマシンに対する抗議によりレース後の最車検で分解され初めて違反が分ることだが ・・・車検がプラクティス前にも行われることを忘れていたのだろうか。

 YAMAHA ALL FACTOR AND PRODUCTION ROAD-RACING TWO-STROKES FROM 1955 TO 1993 by Colin Mackellar, 1995 Crowood によると、"FIM had banned the practice during the winter of 1982."とあり、1982年シーズン後に禁止されたことになっている。レギュレーションは ”Fuel must be contained in a single tank, securely fixed to the machine." (The Art and Science of Motor Cycle Road Racing by Clifford, 1982Hazleton)。 問題はtankが部品としてのtankなのか燃料を入れる部分なのかだろう。

66頁
○「高回転エンジンでは、クランクケース内の空気が、ピストンの上下動や、シャフトの回転の抵抗となって生じる損失を無視できなくなる。これを低減するのがクランクケースの減圧であり、MotoGPマシンでは、ポンプを用いたり、負圧を用いたりして強制的に減圧している。損失低減に積極的なZX-RRでは、ロスを減らすためにポンプによるロスを嫌い、排気負圧を用いた強制減圧システムを採用。」

・この文では損失とロスの違いがよく分らない。ガス圧力等による損失を「損失」、機械損失を「ロス」としているようにも思えるが・・・
・排気負圧を利用する減圧システムに損失はないと考えているようだが、連続的に減圧するからには何らかのエネルギーが必要。この減圧システムは排気管の流速を下げる(排気抵抗増と同じ)ので、排気管だけ見れば出力低下に繋がる機構。
 

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