ロバーツが乗ったマシンを、レースごとに整理したのが次の表である。
マシン種別 | SA | F | I | A | E | Atr | Yg | N | B | GB | S | SM | |
旧型サスペンション | 初期K1(0W70-B-301) | P* | R | R | P | ||||||||
初期K2(0W70-B-302) | R* | P | P | R | R | R | |||||||
後期K2(0W70 B 302) | R | R | P | R | R | R | |||||||
新型サスペンション | 初期(スペイン以降K1) | P | P | P** | P** | ||||||||
後期K1 | P | R | P | P | P |
「R」はレースで使用、「P」はプラクティスのみ使用。「*」はどちらがレースに用いられたか、「**」は初期か後期か不明確。 |
Yamaha−All Factory and Production Racing Two Strokes」(by Colin
Mackellar, The Crowood press 1995)では、新型サスペンション車について「Available from the
third round in Italy, it was debugged over the next four GPs. By Assen
it was ready with a dramatic improvement in
results.」とある。オランダGPの写真等で後期新型サスペンション車が確認できるが、オーストリア、ユーゴスラビアでの新型サスペンション車が初期型なのか後期型なのかは未確認。 |
Sonautoチームのマシン
1983年全日本選手権
1983年全日本選手権で0W70に乗ったライダーは次のとおり。
第1戦(鈴鹿2&4) | 浅見貞男 | 第7戦(筑波) | 木下恵司、平忠彦 |
第3戦(鈴鹿) | 木下恵司、平忠彦 | 第8戦(菅生) | 木下恵司、平忠彦 |
第5戦(菅生) | 木下恵司、平忠彦 | 第9戦(日本GP) | 木下恵司、河崎裕之、平忠彦 |
第6戦(鈴鹿200km) | 木下恵司 |
日本GPでは次のとおり、3人に各1台のマシンが与えられた。もう1台、カバーを掛けたままのマシン(スペアマシン?)がピットに持ち込まれていた。
木下のマシンはフレーム内燃料タンク、シートレール孔有の仕様で、シーズン前公開写真のマシン、第1戦でのK1と基本的に同じだと思われる。ただし、バックボーン・シートレール間に小さい補強が入っている。
河崎の新型サスペンションのマシンのスイングアームはイギリスGP以降のものと同じだが、スイングアームピボットはカートリッジ様でないGPシーズン前半型。フレーム内燃料タンク仕様ではなく、シートレール孔もない。
平の新型サスペンションのマシンは次の特徴があるが、テスト用のマシンのようだ。
・スイングアームは0W70-B-308と同タイプ。
・スイングアームピボット部はカートリッジ様で補強が入っている。
・ステアリングヘッドのカートリッジ部が異常に大きい。
・この時期にしては珍しくスロットルホルダーが片引きタイプで、キャブレターもピストンバルブの旧型と思われる。
・レース後の再車検で(私の聞き間違いかもしれないが)140kgもあった。
平が新型サスペンションのマシンに乗ったのは第5戦以降であるが、日本GPで使用したマシンが第5戦から使用されていたのかといえば疑問である。また、第3戦で使用したマシンは旧型サスペンションでシートレール孔があり、0W70-B307とほぼ同じ仕様と考えられる。
浅見が第1戦で使用した旧型サスペンションのマシンはシートレール孔があり、平が第3戦で使用したマシンと同一である可能性がある。
木下は全レースで旧型サスペンションのマシンを使用した。おそらく0W70-B307を当初から使用したのだろう。
なお、前ブレーキキャリパーは、シーズンの大半で住友電工製が使用された。写真が少ないのではっきりしないが、木下、平のマシンは第7戦まではこれが装着されていた(おそらく第8戦も)。日本GPでは3台ともブレンボ製が装着された。
TBCビッグロードレース(菅生/ノンタイトル)
ロバーツのマシンはK2、ローソンのマシンはE1(旧型サスペンション)。
3 シーズン後公開されたマシン (1)東京モーターショー 東京モーターショーに展示されたマシンは新0W70 B 302(0W、B、302の間の「-」はない)で、幾つかの特徴からサンマリノGP、TBCを走ったK2そのものとわかる。ただし、フェアリングはK1のもの。 |
5 0W70の分類
これまで記述した0W70の差異を整理し、旧型サスペンションのマシンをA型、新型サスペンションのマシンをB型とし、その他の差異により区別し枝番号を付け分類したのが次の表である。
旧型後サスペンション | 新型後サスペンション | ||||||||
分類番号 | A-1 | A-2 | A-3 | A-4 | A-5 | B-1 | B-2 | B-3 | B-4 |
代表例 | ラグナセカテスト | シーズン前公開マシン、シーズン 当初の0W70-B-301(旧K1)、シーズン前半のE1、0W70B-307、ラバードが第12戦プラクティスで乗ったマシン |
シーズン当初の 0W70-B-302 |
ソノートチームの マシン |
ユーゴ以降の0W70 B 302(新K2)、シーズン後半のE1 | 第3戦イタリアGPで登場したマシン、スペイン〜ユーゴのK1 | 0W70-B-308 | オランダ以降のK1、 後半のE2 |
日本GPでの平のマシン |
フレーム内燃料タンク | 該当? | 該当 | 非該当 | 該当 | 非該当? | 該当? | 非該当 | 不明 | 非該当 |
バックボーン部点火コイル | 無 | 無→有(移設) | 有 | 有 | |||||
スイングアームピボットカートリッジ | 非該当 | 該当 | 非該当 | 非該当 | 該当 | 該当 | |||
スイングアームピボット部上部補強 | 無 | 無→極小 | 小 | 大 | |||||
バックボーン-シートレール間補強 | 無 | 無(日本GPでの307は小補強有) | 無 | 有 |
|||||
シートレール孔 | 無 | 有 | 有 | 無 | 無 | 無 | |||
ステアリングヘッドカートリッジ | 小 | 小 | 大 | ||||||
スイングアーム | 同一タイプ? | イギリスGP以降、補強追加 | 1型 | 2型 | |||||
備考 | 16インチ前輪をテスト | シーズン直前に新造? | フレーム内燃料タンク仕様(A-2)を改修の可能性有 | 旧型サスペンション型の改修? | B-1の改修? | テスト用? |
6 諸元
エンジン形式 | 2ストローク水冷40度V型4気筒 |
動力伝達経路 | 各クランク→クラッチギア→変速機メインシャフト→変速機カウンターシャフト |
クランク | 2気筒別体、ローラーベアリング×3・ボールベアリング×1(右端)※ |
クランク回転方向 | 前方 |
ボア×ストローク o | 56×50.7 |
吸気制御 | Vバンク間ギア駆動ロータリーディスクバルブ |
シリンダーポート | 排気×3?(パワーバルブ付)、掃気×5 |
キャブレター | ミクニ34o2気筒分一体型ピストンバルブまたはフラットバルブ |
点火間隔 | 180度(対角線上2気筒がそれぞれ同時点火) |
点火方式 | CDI |
変速機 | 6速 |
最高出力 PS/rpm | 140/11000 |
フレーム | アルミツインチューブ |
前サスペンション | テレスコピック(キャリパーサポート作動アンチダイブ機構付) |
後サスペンション | ベルクランク(ショックユニット前傾)/ボトムリンク(ショックユニット直立)、オーリンズ製ショックユニット |
前ブレーキ | 320φローター×2、対向2ピストンキャリパー/ブレンボ製4ピストンキャリパー |
後ブレーキ | 220φローター、対向2ピストンキャリパー |
前ホイール | 2.5×18(モーリス、ベイマグ)、2.5?×17(ダイマグ) |
後ホイール | 3.5×18(モーリス) |
車重 kg | 125〜130kg |
※MOTO COURSE1983-84ではローラーベアリング×4となっている。0W61は公開された展開図では表のとおり。 |