3 スペンサーの乗ったNS500と戦績

 スペンサーが使用したマシンはフレーム番号NS500F-3001NS500F-3002の2台と思われる。写真からするとシーズン途中でフレームを交換した可能性が高いが、その場合もフレーム番号は変えなかったのだろう。 以下、フレーム番号の記述は日本GPを除き写真等による推定。

第1戦南アフリカGP

   下左端は3001のストリップ。下左はシートレール前端を拡大したもので、シートレールに孔が開いている。これは本来はテールカウルを固定するためのものだろう。下右は3002で、シートレール前端を拡大すると(下右端)、テールカウル前端の少し上に孔が開いているように見える(シーズン前公開された写真ではその部分にテールカウルがあり見えない)。とすると、この時点では3001、3002ともRS500Rと異なり、シートレール前端に孔が開いていたことになる。
    
 下左は上左端の、中は上右の、いずれもスイングアーム後端を拡大したものだが、形状からするとCFRPをアルミ材でくるんだもの、あるいは塗装したものと思われる。

  プラクティスでは1分26.60秒でスペンサーがポール。レースでもスペンサー(3002)が2周目にトップに立つとそのまま独走し優勝、1分26.43秒の最速ラップも記録した。ロバーツはスタートで出遅れ、追い上げたものの2位。

第2戦フランスGP

 プラクティスでスペンサーは1分37.04秒で2位、ポールはロバーツで1分36.80秒。
 レースでは序盤、スペンサー(3002)等NS勢がトップグループを形成する。4周目にロバーツがトップに立って独走するが、排気管が割れ後退、スペンサーがトップに立ち優勝した。ロバーツは4位に終わった。最速ラップはスペンサーの1分35秒70。

第3戦イタリアGP
 
 下左は3002(レース使用車)のスイングアーム部分を拡大したものだが、チェーン引きの部分と「SHOWA」の文字のある部分の形状の違いがよくわかる(シーズン前公開時の写真と比較されたい)。また、スイングアーム中央の穴も補強の溶接による盛り上がりがない。このスイングアームはCFRP製である。また、下右はパドックでの3002だが、シートレールに孔はない。新フレーム(フレーム番号はNS500F-3002のまま)が登場した可能性がある。

 プラクティスでスペンサーは1分52.90秒で2位、ポールはロバーツで1分52.69秒。
 レースでスペンサー、ロバーツら4人が序盤トップグループを形成、中盤、ロバーツが独走態勢に入るが、終盤、周遅れを抜く際のミスでコースアウト。スペンサーがトップに立ち優勝、ロバーツは結局ガス欠でリタイア。最速ラップはロバーツの1分52秒80。

第4戦ドイツGP

 下はプラクティス中の3002のフレーム上部の拡大写真で、フレーム番号のシールが貼られている。

 プラクティスでスペンサー(3002、CFRP製スイングアーム)は2分8.66秒でポール、ロバーツは2分10.25秒で2位。
 レースでは序盤、スペンサー(3002)が独走体制に入るが、排気管がひび割れし後退、それまで2位を走っていたロバーツがトップに立ち優勝。スペンサーは徐々に後退したが、降雨によりレース途中でチェッカーが振られたため4位を確保した。最速ラップは片山の2分10.48秒。

第5戦スペインGP

 プラクティスではスペンサーが1分29.87秒でポール、ロバーツは1分30.37秒で2位。
 レースでは序盤からスペンサー(3002)、ロバーツが激しい争いを繰り広げる。中盤はロバーツが2秒程度リードするが、終盤、再び激しい争いとなった。しかし、最終ラップの第1コーナーで周遅れがトップ争いに水を差し、スペンサーがトップを維持してゴール。最速ラップはロバーツの1分29.57秒。
  左はレース中の3002。スイングアームはCFRP製と思われる。

第6戦オーストリアGP

プラクティスではロバーツが1分17.89でポール、スペンサーは1分18.93で2位。レースではロバーツがスタートでやや出遅れたものの4周目にトップに立ち独走。スペンサー(3001)は2位を維持していたが、コンロッド折損でリタイア。最速ラップはランディ・マモラ(スズキ)の1分18.11秒。

第7戦ユーゴスラビアGP

プラクティスではスペンサーが1分32.271秒でポール、ロバーツは1分32.562秒で2位。
 スタートではロバーツの0W70になかなか火が入らず大きく出遅れ、その間のスペンサー(3001、CFRP製スイングアーム)が独走し優勝。ロバーツは追い上げるもののスペンサーから26秒あまり遅れた4位がやっとだった。最速ラップはスペンサーの1分33.36秒。

 ホンダの福井氏によるとこのレースから130PSの新仕様(従来は127PS)エンジンが投入されたとのことである。

第8戦オランダGP

プラクティスではスペンサーは2分48.59秒で2位、ポールは2分48.52秒のロバーツ。
 レースではスペンサーがスタートからトップに立つが、ロバーツは出遅れた。しかし、ロバーツが追い上げ、中盤にトップ立ち、片山に追い上げられたもののそのままゴール。スペンサーは3位だった。最速ラップはロバーツの2分47.47秒。
 下左はプラクティス中の3002(レース使用車)で、スイングアームはCFRP製。

第9戦ベルギーGP    

 プラクティスではスペンサーが2分32.70秒でポール、ロバーツは2分32.79秒で2位。レースではスペンサー(3002、CFRP製スイングアーム)が飛び出し、ロバーツが追うといういつもの展開だったが、終盤に入るころ、ロバーツがトップに立ちそのまま独走して優勝、スペンサーは2位だった。最速ラップはロバーツの2分32.42秒。


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