3 現存するマシン

(1)RC149E-103/RC148F-101

  存在が明らかになったのは、1973年にホンダ創立25周年記念行事の一環として、荒川テストコースで公開された時である。
  1973年当時  現状(ただしエンジン新造前)
前フェンダー、前ブレーキトルクロッドを変更、右シフト

このマシンを左のオランダGPの時のマシンと比較すると矢印・記号のとおり違いがある。

  箇所 現存マシン(1973年当時) オランダGP時
A 吸気/排気カムシャフトケースカバーのフレームマウント位置 カバーの前方/カバーの中央 カバーのほぼ中央/カバーの後方
B シリンダーヘッド横の孔の上辺の形状 半円 角張っている
C キャブレター ピストンバルブ フラットバルブ
D 前ブレーキトルクロッド 長い 短い板
E 前フェンダー形状 写真のとおり 写真のとおり
F バックボーン−シートレール間の補強 なし
G スイングアームピボット部からリアショック上部へのパイプ 丸パイプ 角パイプ(丸パイプを補強?)
H リアショック ガーリング製 ショーワ製

 1965年日本GPに登場したRC148E/RC148Fの中央気筒排気管はエンジン左を通りシート左脇に顔を出していたが、1966年型はいずれもエンジン左を通りエンジン後方を横切りシート右脇に顔を出している。
 125cc5気筒、250cc6気筒エンジンの点火系の駆動部はいずれもエンジン後方にあるが、RC165E系は駆動部の両側に点火システムがある。左側が発電機で右側がパルサーだろう。仮にRC148Eもそうなっていたとしたら、中央気筒排気管をエンジン後方を横切るようにすることは難しい。したがってRC148Eの点火系はRC165Eと同方式だった可能性がある。そして1966年型は第1戦スペインGPの時にすでに中央気筒排気管の取り回しが変更されていたので、RC149Eは1966年第1戦から登場していたと考えられる。

 2種類のフレームは明らかに異なる。F、Gの差は現場での対応によるものとも考えられるが、エンジンのAの差は両フレームのエンジン搭載位置の違いを反映しており、現場対応とは思えない。現場での写真が少ないのではっきりしないが、1966年シーズン当初は旧型と新型フレームが併用され、シーズン後半には新型フレーム車の数が増加したようだ。

 スペインGP時のフレームは1965年日本GPの時のフレームと同タイプと思われることから、このマシンは本来、RC149E/RC148Fで新型フレームのマシンがRC149E/RC149Fということになる。ただし、1966年シーズン当初からRC149Eエンジンが使用されていたのであれば、旧型フレームも新型フレームも、シーズン当初のマシンのカルネ、通関申請書等もRC149E/RC149Fで申請し、打刻もRC149E/RC149Fだったことも十分考えられる。

 現存するこのマシンは1965年日本GPで使用されたRC148FにRC149Eを搭載し日本で使用されたテスト用マシンなのだろう。何しろガーリング製リアショックを125cc5気筒に装着したマシンの当時の写真はないのだから。フレームのシリンダーヘッド排気側のハンガー部を後から延長したような跡も見える。
 なお、ゼッケン「8」はタベリが1965日本GPで使用しており、フレーム番号からしても、車体は1965日本GPで使用されたものである可能性が高いと思う。

(2)-/‐(エンジン、フレーム番号は不明)

  左はタベリが保有する新型フレームのマシン。ホンダから記念に贈られたといわれているが、1967年にタベリが世界選手権レース以外のレースに出場するため貸与され、そのまま事後承認の形でタベリが所有することになったのだろう。

 右は当時、ホンダの社内で撮影されたと思われる写真だが、タベリが保有するマシンが酷似していることがわかる。
   

(3)RC148F-103(フレームのみ)
  RC148Fを個人が所有しているとのこと。基本的には(1)のRC148F-101と同じようだ。

4 諸元

いずれも推定を含む。

  RC148E/RC148F RC149E/RC149F(RC149E/RC148F)
ボア×ストローク o 34×27.4 35.5×25.14
バルブ数 4 4
バルブ径 o 吸13.5 排11.5 吸13.5(12.5) 排11.5
バルブステム径 o  3.4(吸、排) 3.4(吸、排)
バルブタイミング(IO、IC、EO、EC)  度 30、40、40、30 30、40、40、30
バルブリフト o 5 5
バルブ挟角 度 吸24 排32 吸24 排32
カムシャフト駆動方式 スパーギア スパーギア
点火プラグ径 o 8 8
圧縮比 9.8 10.4
ピストンリング数、幅 o 2、0.6 2、0.6
クランクシャフト均軸径 o 12 12.4
キャブレター ケイヒン フラットバルブ19o? ケイヒン フラットバルブ
(またはピストンバルブ)21mm
点火方式 トランジスタ? マグネト
点火間隔 度 120-120-120-120-240(並列6気筒から1気筒抜いたもの)
最高出力 PS/rpm 31.5/19250  33/20000rpm
変速機段数 8 8
変速機ギア比(8速-1速) ?(おそらくRC149Eと同じ) 1/1.04/1.1/1.19/1.31/1.5/1.76/2.33
タイヤサイズ(前/後)  2.50-18/2.75-18 2.50-18/2.75-18
 ブレーキ(前/後) 2リーディング・2パネル/2リーディング 2リーディング・2パネル/2リーディング
エンジン開発開始時期 1965年2月 1965年7月

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