ホンダの機種名

 ホンダの1961年までのレーサーのエンジン、フレームの刻印は、「RC+形式+E(またはF)−5○○○○」で、Eはエンジン、Fはフレーム、5はレーサー(あるいはレース部門)を表しているのだろう。
 現存するマシンを観察するとエンジンとフレームで形式名が異なることがある。1973年の再公開の時の50ccマシンがそうだったし、1980年、鈴鹿サーキットでの「モータースポーツ展」時の250cc6気筒もそうである。いずれもレストア前の状態であり、このようなことは実戦でも日常茶飯事であったと思われる。

 ある時点で車体、エンジンの形式名が同じであったとしても、大幅に改良されたエンジンが登場した段階でエンジンの形式名だけ新しくなるということがあったり、その逆のパターンもあったと考えられる。公表される型式名はエンジン、フレームの形式名のどちらか一方をその時の都合で出しているようである。前述の50cc2気筒(排気管がエンジン下を通るタイプ)はエンジン番号2RC114E-203、フレーム番号RC113F-206だが、以前は2RC114と呼称され、最近はRC113と呼称されている。
 F1(四輪)のRA300も、車体はRA300だがエンジンはRA273Eである。

 このようなことから、当時のホンダレーサーについて、エンジン名とフレーム名を区別する必要がある時は「RC○○○E/RC○○△F」と記述することにする。

 ただ、考慮しなくてはならないのはカルネ(完成車を外国に持ち込む際、「一度持ち込みますが、必ず持ち出しますので、輸入禁止にしないでください、関税を免除してください」という証し)等である。カルネにはフレーム番号等を記載する必要があり、新型エンジン、新型フレームを急遽、GPの現場に持ち込む時、新しい番号を刻印するのではなく、すでにあるカルネに記載された番号をそのまま刻印することもあったと思われる。