RC143Eと2RC143E

 左は現存するRC143E-50022(フェアリングステーが邪魔している)、右は2RC143E-50017である。オイルラインの有無、オイルパンの形状等の違いがわかる。ただし、RC143Eであっても、オイルラインがないものが多く確認されており、オイルライン有の仕様は60年後半に登場したのではないかと思われる。オイルラインの有無を除けば吸気管長さ、オイルパン形状が外観上の主な違いであり、シリンダーヘッド内部が両エンジンの実質的な差であろう。
 なお、2RC143Eには180度クランク(180度-540度間隔点火)と360度クランク(360度-360度間隔点火)仕様があり、現存するものは後者である。
            
 公表された両エンジンの基本的な仕様は同じである。2RC143Eの公表出力は5月時点で19.5PS/13000rpm、最終的には21PSを記録(回転数は性能曲線図からすると13500rpmあたり)した。

ボア×ストローク 44×41
バルブサイズ・数(吸気・排気) 17.6×2、17.1×2
燃焼室形式 ルーフ型
点火方式 箱型マグネトー

 2RC143Eはいつ登場したのだろうか?次の理由から第2戦〜第4戦のいずれかとは考えられる。
・2RC143Eが第1戦(4月23日)に登場したとすると、その開発開始時期から考えて早すぎる(実際の開発開始時期がもっと早かった可能性もあるが)。また、現存するRC143E/RC143Fがいずれも61年仕様と考えられ、RC144Fが登場する前の第1戦時にはそのマシンが走ったと考えるのが自然である。
・第4戦TTレースのマシンのオイルパンの形状からするとすでにTTレース時に2RC143Eが走っていた。

ホンダの技術者だった八木静夫氏が書かれた「世界二輪グランプリレースに出場したホンダレース用エンジンの開発史」によると2RC143の開発が始まったのは1961年4月で登場したのは第3戦(5月21日)、RC143の吸排気系のマッチングを向上したということである、。開発開始を仮に4月上旬とすると1.5箇月で登場したことになる。上写真のように両エンジンに外観上大差はなく、吸排気系のマッチングで出力を向上したということであれば考えられない話ではない。少し早すぎる気もするが...

 

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